皆さんこんにちは。ファイナンシャル・プランナーの渡邊です。今日は、最近高騰が続いている金(gold)について書いていきます。8月21日付の日経新聞では、金が6年ぶりの高値を付けたという記事が掲載されていました。どうして金が買われているのでしょうか?そして、いったい誰が買っているのでしょうか?最近の経済ニュースの主役は、米中貿易摩擦問題や米国の利下げ、イギリスのEU脱退(BREXIT)問題など、先行きが不安になる材料が豊富です。こんな時に、あなたの資産をしっかり守ってくれるのが金(gold)なのです。それでは、金投資のメリットやデメリット、買い時や売り時などを一緒に考えていきましょう。
金の成り立ち
経済において、金の成り立ちを考えてみましょう。今でこそ、金は宝飾品というイメージがあるかもしれませんが、元々は、お金としての機能を持っていました。小中学校の授業で、金本位制という言葉を習ったと思います。金本位制とは、金を通貨価値として判断し、中央銀行が発行した紙幣と同額の金を常時保管して、金と紙幣との交換を保証する制度です。1816年にイギリスで始まり、日本でも1897年に明治政府が金本位制を採用しました。どうして、金をお金に換える制度が始まったのでしょうか?もっと歴史をさかのぼると、縄文時代にはお金なんて存在しません。当時は、貿易の手段は物々交換の時代でした。コメと魚を交換したり、土器と木の実を交換して生活をしていました。しかし、魚などの生物は腐ってしまいますし、場合によっては、欲しくないものと交換しなければならないこともあったかもしれません。そこで、貴金属としての希少価値もあり腐敗もしにくい金が貿易の手段として使われるようになったのです。金は、物々交換と比べると非常に便利ですが、高価なものを買う時に、金を持ち運ぶのは重たいので、紙幣をお金として使う文化が広まりました。しかし、偽札の発行などが相次ぎ、紙幣に対する信用がなくなってきました。そこで、金と紙幣とを交換する金本位制が確立されたのです。世界中での貿易手段が金になりましたが、第二次世界大戦が終わる頃には、世界中の金の80%以上がアメリカに集中し、他国は、紙幣を発行したくても金の保有量が足りずに、紙幣を発行することができなくなりました。
基軸通貨米ドルの誕生
第二次世界大戦後に世界の金がアメリカに集まってしまった為、1944年にアメリカと欧州の大国が主導してブレトン・ウッズ体制が定められました。ブレトン・ウッズ体制とは、米ドルを基軸通貨として、金1オンスを35ドルと定め、各国の通貨と米ドルの交換レートを一定に保つものです。ブレトン・ウッズ体制により、世界の基軸通貨は金と米ドルになったのです。しばらくこの体制が続いていましたが、ベトナム戦争敗北による財政悪化から、1971年にアメリカのニクソン大統領が、金とドルの交換停止を発表しました。これがニクソンショックと呼ばれるものです。ニクソンショックにより金本位制は崩壊し、これ以降、各国の中央銀行は、自由に通貨を発行できる時代になったのです。現在の通貨は、米ドル・ユーロ・日本円・イギリスポンドなど様々ありますが、現在の基軸通貨は依然として米ドルです。私たちは日本で生活をして、給料も日本円でもらっているので、あまり実感が沸かないかもしれません。しかし、世界の通貨取引量で圧倒的な取引額を誇るのは、基軸通貨の米ドルなのです。
米ドルの存在感
この表は、2016年にBIS(国際決済銀行)が発表した通貨別取引高シェアを示しています。やはり、基軸通貨である米ドルが、世界の半分近くの取引を占めています。例えば、金をはじめとする貴金属やエネルギーの決済は米ドルですし、トウモロコシや大豆の決済も米ドルで行われています。海外との貿易は、基本的には米ドルかユーロで行われるのが一般的です。私たちも、海外旅行に行く時に外貨に両替しますが、多くの国で米ドルは使えます。使えなくても、現地通貨に両替をする時に、日本円よりも米ドルの方が交換レートが良いはずです。それは、米ドルが基軸通貨だからです。最近、米国が利下げをしている影響で、ドル円の為替レートが106円程度まで円高に振れてきていますね。長期的に考えたら、100円割れは目をつぶって買っても損はしないと思います。何しろ、米ドルは基軸通貨ですので、どこに行っても使えます。資産運用の観点から考えても、米ドルの投資商品は数え切れないほど豊富な選択肢があるのです。そこで注目したいのは、金vs米ドルという関係です。
金vs 米ドル
歴史的に見ても、かつて基軸通貨であった金と米ドルですが、この2つには面白い関係が見られます。それは、金価格は米国が利下げをすると上昇し、利上げをすると下落しやすいということです。これは、金の性質と通貨の性質を考え、人々の心理を読み解けば簡単に理解できます。まず、人々の心理から考えてみましょう。人間には欲があります。誰しもが、儲けたいと思う金欲です。世界中の投資家が利益を得ようと、何かしらの商品に資産を投資しているのです。経済が好調の時、不調の時、それぞれ儲けやすい商品があるわけです。景気が悪いからといって、タンス預金をしているのは日本人くらいです。各国の中央銀行や年金基金、ヘッジファンドや個人投資家などは、タンス預金などするはずがありません。タンス預金においておいたら、年金基金は一瞬で破綻してしまうからです。しかし、当然ですが、誰しもが損はしたくはないのです。損失を出さないようにするには、それぞれの商品の特性をしっかりと理解しておく必要があるのです。そこで、金とドルの性質を確認しましょう。
金の特徴
金にはどのような特徴があるのでしょうか。一緒に確認していきましょう。
- 実物資産
- 宝飾品
- 金利が付かない
- 流動性が低い
まだ他にもあるとは思いますが、大きく考えると上記のような特徴があります。金を買う人がたくさんいるのは、実物資産だからだという人もいるでしょう。株は会社が破産してしまえば紙切れですが、金は実物資産なので、資産価値がゼロにはならないでしょう。そして、宝飾品としても根強い人気があります。記念日に18kをプレゼントする人もいるでしょう。インドや中国では、結婚をした時に金を贈る文化があるのです。そして、基軸通貨の米ドルに比べると、流動性が低いのも特徴です。最大の違いは、金には金利が付かないということです。金は何年保有していたとしても、金利は付きません。従って、金価格が上がらなければ、金を保有している意味はないのです。
米ドルの特徴
米ドルにはどのような特徴があるのでしょうか。一緒に確認していきましょう。
- 基軸通貨
- どこでも使える
- 金利が付く
- 流動性が高い
まだ他にもあるとは思いますが、大きく考えると上記のような特徴があります。米ドルは、世界の基軸通貨です。世界で最も取引量が多い通貨ですので、当然ですが、どこに行っても使えます。そして、取引量が多いということは、いつでも換金がしやすく、流動性が高いのが特徴です。最大の違いは、米ドルには金利が付くということです。米ドルは長年保有していれば、金利という恩恵を受けることができるのです。これは米ドルに限らず、通貨であれば、基本的には金利は付きます。しかしながら、日本円のようにゼロ金利の通貨は、保有していても金利は雀の涙しかつきません。
金と米ドル、買い時は?
今まで金と米ドルの特徴を見てきました。それでは、それぞれの買い時はいつなのでしょうか?
- 金の買い時は、米国の利下げした時
- 米ドルの買い時は、米国が利上げした時
簡単ですよね。その理由はなぜかをお教えします。基本的に、為替レートは金利差で動きます。世界の基軸通貨である米ドルを保有して、高金利が付くのであれば、皆んな米ドルを買うはずです。その為、米国が利上げを継続して行う局面では、米ドル高円安傾向になるはずです。反対に、米国が利下げをした時はどうでしょうか?今までは、米ドルを保有していれば、高金利が付いたのです。しかし、金利を引き下げると、当然ですが、もらえる金利も低くなってしまいます。投資家は「なんだ、米ドルを持っていても金利が付かないなら魅力がないな」と思うのです。そうすると、米ドルを売って、何かを買うわけです。米ドルの代わりに買われるのが金なのです。一般的に、金利を引き下げるのは、景気が悪い時です。通常、景気が良い時は金利を上げ、景気が悪い時は金利を下げて景気調整を行います。従って、米国が利下げをするということは、景気があまり良くないということです。景気が悪い時に株価は値下がりしやすいですし、米ドルを持っていても金利は下がってしまいます。投資家は、できる限り損失を出したくないという思いがあるので、経済の先行きが不透明な局面では、金利が付かない金を買うのです。その為、米国が利下げを行なっている現在は、金の絶好の買い場なのです。
金の買い手は…
マネージュのコンサルを受けているお客様は、どのような経済環境の時に、どういう資産を持てば良いのかという資産形成方法を身に付けていますので金を購入しています。しかし、個人投資家が少し金を買った程度では、金価格が6年ぶりの高騰をするほど上がることはありません、では、誰が金を買っているのでしょうか?現在の金の買い手は、各国の中央銀行です。2019年上期の中央銀行の金購入量は、1971年以降最高ペースなのです。各国中央銀行は、先行き不透明な経済環境での米ドル依存の脱却を考え、資産保全の目的で金を購入しているのです。特に、ロシアや中国、ポーランドなどの新興国が活発に金の購入を行なっています。2019年上期の中央銀行による金の買い増し額は、約170億ドルにも達するのです。基本的に、買い手が多ければ値段は上がり、売り手が多ければ値段は下がります。現在の金の買い手は各国の中央銀行による莫大なマネーですので、景気見通しが不透明な状況が続く限り、しばらく金価格の上昇は続くと思います。時々、景気が悪い時に投資なんてするべきではないという意見を聞きますが、それは、分散投資の考え方ができていない証拠です。世界を見渡しても、景気が悪いからといってタンス預金においておくのは日本人くらいでしょう。各金融商品の特徴を理解して、好景気・不景気の経済状況を考慮し、正しく分散投資を行えば、あなたの資産は守れるはずです。先行き不透明な経済状況、そして、世界的な低金利環境が続いている今こそ、マネー教育を学びましょう。このブログを読んで「家計の見直しや資産形成に関して相談したい」と思った方は、是非、お気軽に連絡を下さい。全国どこでも対応いたします。遠方のお客様は、zoomというアプリを利用して、お互いのパソコンの画面を見ながらコンサルを行います。マネージュでは、中立的なファイナンシャル・プランナーとして、マネー教育に特化したコンサルティングを実施しています。少しでも興味を持って頂けた方は、LINE@への登録と、セミナー、コンサルにお申し込み下さい。あなたのお役に立てるように、全力でサポートさせて頂きます。