皆さんこんにちは。ファイナンシャル・プランナーの渡邊です。今日は、苦境に立たされている銀行をはじめとする金融機関について書いていきたいと思います。4月から日曜ドラマ『集団左遷‼︎』が始まり、少しは現在の金融機関の現状が分かるようになったと思います。TVドラマは、意外と金融機関の現状がよく描かれていることが多いので、時代の流れがつかめて面白いです。かつて、日系証券会社、外資系銀行、プライベートバンクを経験した私の実体験も交えて、金融機関のノルマと今後の展望をお伝えします。
金融機関のノルマ
金融機関は、モノづくりを行なっている企業ではありません。金融機関は、利用者の資産を預かって資産運用、保険契約、ローン貸し出しなどを行なって手数料を稼ぐビジネスモデルです。つまり、無から有を生み出すような0→1のビジネスではなく、最初にお客様の資産や担保があって成り立つビジネスということです。私は、日系証券会社、外資系銀行、プライベートバンクの勤務経験があり、日本・米国・スイスの会社を経験できました。しかし、どこの会社でも基本的なノルマは同じです。それは、手数料収入と預かり資産の獲得です。それでは、具体的にどの程度の手数料を稼がなければならないのかをみてみましょう。
手数料収入
私が大学卒業後に入社をした日系証券会社では、新人のノルマは月間100万円の手数料収入でした。私は大学在学中から株式投資をしていて、好きで金融業界に入ったので、「同期の中では絶対に負けたくない」という思いがありました。6月に1件の新規開拓に成功して以来、毎月1000万円以上の大口新規開拓をずっと継続していたので、月間手数料100万円は簡単に達成できました。同期の中で投資信託販売は常にトップを取っていたので、あまり上司に成績面で怒られた記憶はありません。その実績が評価されて、米国の外資系銀行へ転職ができました。そこでの目標は、月間400万円の手数料収入でした。しかし、その銀行は新規開拓が不要で、担当顧客のコンサルをするのみでした。預かり資産も約30億円ほどあったので、月間400万円の手数料も簡単に達成できました。1週間で営業目標を達成していたので、後の3週間は来月の案件作りに費やし、毎月毎月、安定して目標を達成できたのです。毎日愚直に仕事に取り組んだ結果、スイスのプライベートバンクへ転職することができました。世界最大手のプライベートバンクでしたので、そこでの目標は年間手数料2億円でした。今までとは比べ物にならない莫大な目標です。初めてキツイなと思いました。なんとか手数料を稼ぐために、本来はする必要がない取引もせざるを得なくなったのです。若い頃は何も知らないので、がむしゃらに数字にこだわることが出来ました。しかし、ある程度年齢を重ねると、お客様のことも考えるようになるのです。あまり無駄な売買で手数料を稼ぐ必要はあるのかなという疑問を抱くようになったのです。
預かり資産
預かり資産とは、金融機関がお客様から預かる資産のことです。商品を購入して手数料を稼ぐためには、当然ですが、ある程度の資産を入金いただく必要があるのです。その為、金融機関は、預かり資産の獲得に必死なのです。新卒で入社した日系証券会社の目標は、年間5億円の資金導入でした。1年目で5億円の資産獲得は結構厳しいのですが、私は、同期でトップの成績を残して外資系金融へ転職をするのが夢でした。当時の先輩インストラクターからも「大口顧客と取引をしろ」という指導がありました。口座開設をする労力は、100万円の新規開拓でも1000万円の新規開拓でもほぼ同じです。その教えを忠実に守っていたので、私は、1000万円未満の口座開設はしませんでした。その甲斐あって、年間5億円の資産獲得に成功しました。そして、憧れのプライベートバンクに転職ができました。しかし、世界最大手のプライベートバンクの目標は、預かり資産純増40億円というとんでもない金額でした。口座開設をする条件が2億円以上の入金でしたので、2億円のお客様を20件開拓してこなければいけません。しかも、預かり資産純増なので、出金されたらマイナス評価で計上されるのです。その分をどこかで埋め合わせをして獲得してこなければならないという厳しいノルマとの戦いでした。そこで、またしても疑問が湧いてきました。預かり資産とは一体誰の資産なのかということです。
手数料から預かり資産を重視
昔の金融機関は、手数料収入が最も重要視されていました。営業マンは、数字がすべてと言われたほど、とにかく会社のために手数料を稼いだ人が出世していく世界です。しかし、無謀な営業ノルマのために、無駄な短期売買の繰り返しをせざるを得ない営業マンも多数いたと思います。金融庁は、投資信託の短期売買に関して苦言を呈しました。投資信託というのは、対面の金融機関で購入すると、平均1-3%程度の手数料がかかります。その為、短期で売買させて手数料を稼ぐ行為を禁じようとしたのです。しかし、稼いでいる営業マンからすると、投資信託の購入はあまりしてほしくないと思います。なぜならもっと簡単に稼げる商品が他にあるからです。保険や債券、仕組債と呼ばれる商品などは、目に見えない高額の手数料がかかっています。もっと簡単なのは株式です。株式投資の手数料は、対面金融機関の場合、概ね1%の手数料がかかります。例えば、毎月1回、株式を売買したら年間どのくらいの手数料がかかっているのかわかりますか?買い注文で1%、売り注文で1%なので、合計2%の手数料が12ヶ月かかる計算です。従って、24%もの手数料がかかっているのです。無駄な売買で、こんなにも多くの手数料がかかっているという認識を持つべきです。そこで、金融機関の評価体系が、次第に手数料重視から預かり資産重視に変わってきました。しかし、預かり資産とは金融機関の資産ですか?違います!預かり資産とは、お客様の資産です。あなたは、一時的に金融機関の資産を預けているだけです。資産運用や保険で預けた金融資産を、いつか返してもらうはずです。誰も、金融機関に寄付をしているわけではありませんよね。従って、どの金融機関も最終的には顧客に返すという観点から考えると、金融機関の預かり資産などゼロなのです。
銀行員が大失業
時代の変化とともに、金融機関のビジネスも大きな変化を迎えています。かつては、就職人気ランキングのトップを独占したほどの金融業ですが、現在は、採用人数も激減、支店統合やリストラ、早期退職を募集するような環境です。なぜこのようになってしまったのでしょうか?それは、日本の異次元の低金利政策とIT化が大きな理由です。まず、現在の低金利環境では、金融機関は稼ぐことができません。預金を集めてきても、こんな低金利ではほとんど利益は出ません。住宅ローンを貸し出しても、金利はかなり安いです。異次元の低金利政策は、金融機関の業績悪化につながっているのです。そして、IT化の問題もあります。昔は、預金やローンを利用したいと思ったら銀行に行く必要がありました。株式や投資信託を買う時は証券会社に行く必要があったのです。しかし、現在はインターネット銀行やインターネット証券があります。わざわざ、平日の15時までに店頭に行かなくても、365日いつでも自宅のパソコンやスマートフォンから取引ができる時代なのです。しかも、圧倒的な手数料の安さで取引が実行できるという便利な時代なのです。そもそも、金融機関に莫大なノルマが与えられるのはどうしてなのでしょう?それは、人件費の高さと全国の支店にかかっているコストです。大手金融機関に勤めている社員の年収は1000万円を超えています。そして、大都市圏の駅前に立地している立派な支店にも多くの費用がかかっているのです。こんなに多くのコストをかけて営業をする必要はないと思います。
金融機関の評価体系の変化
上記に書いた通り、金融機関の評価体系は、手数料収入から預かり資産重視へと変わってきました。しかし、私は、預かり資産を評価するのはおかしいと思います。そして、私はそんな金融機関とお付き合いをしたいとは思いません。なぜなら、顧客ファーストではなく、自社ファーストになっているからです。もう一度確認しますが、預かり資産とは誰の資産ですか?預かり資産は、金融機関の資産ではなく、顧客の資産です。一時的に預けているだけの資産を評価する意味がありません。例えば、私が一生懸命提案をして、顧客の資産を増やしたとします。するとお客様がこんな風に言ってきました。「渡邊さん、良いアドバイスをしてくれてありがとう。資産が増えてとっても満足しているよ。せっかく増やしてくれたので、出金してマンションと車を買うことにしたよ。本当にありがとう」このような場面は、営業をしていれば誰にでもあるシチュエーションです。営業マンは熱心に提案をし、顧客も満足度が高い素晴らしい結果です。しかし、預かり資産は出金をされるたびに減っていきます。従って、私の評価は最低評価になってしまう訳です。果たして、このような結果で納得できるでしょうか?もしも私がこのような評価体系の会社に勤務をしていた場合、すぐに会社を辞めます。なぜなら、正当な評価を受けることが難しいからです。預かり資産を評価体系にすると、あなたは出金しにくくなるのです。なぜなら、営業担当や支店長が必死で出金をされないように止めてくるからです。簡単に言えば、預かり資産を評価にしている金融機関と取引すると、自分の資産が自由にできないということです。いくら口座残高が増えても、自由に使えないお金に意味はありません。では、手数料や預かり資産ではない評価体系とはどのようなものがあるでしょうか?それは、顧客の資産が増えた(儲かった)分だけ評価をするというものです。
顧客資産増加が新基準
2019年4月24日の日経新聞に『三井住友銀行、ノルマ廃止!顧客資産増加を重視』という記事が掲載されました。顧客の資産が増加をした場合に評価が高くなる新基準です。手数料でもなく、預かり資産でもない新たな評価体系の導入です。一見、良い評価基準かなと思いましたが、顧客の資産増加が評価基準であれば、わざわざ対面金融機関の必要がありません。対面金融機関は、もともと商品の手数料が割高です。高い手数料を払って対面金融機関で取引すれば、無駄なコストがかさみます。最も顧客の資産が増えやすいのは、正しい金融知識を身に付けて、インターネットで取引をすることです。
ネットを正しく活用することが成功への近道
現在はIT技術が発展していて、金融業界でもインターネット銀行やインターネット証券で取引ができます。国内だけではなく、世界中の株式や債券、投資信託、ETF、金などの商品が、あなたのパソコンやスマホで取引可能なのです。それも、たった1万円程度の少額から自分のペースで取引が可能なのです。ネット証券やネット銀行の利点は、営業マンがいないということです。その為、手数料稼ぎの短期売買もなければ、出金を止められる心配もありません。あなたのライフプランに合わせて、ゆっくりと資産形成が行えることが最大のメリットです。そして、手数料も対面金融機関と比較すると圧倒的に安いのが特徴です。こんなに便利なネット証券ですが、一つだけ注意点があります。それは、ある程度の金融知識を持っていないと、取引することが難しいということです。世界中には数え切れないほどの金融商品があります。その為、経済環境に合わせたポートフォリオや、年代ごとの資産形成方法、商品や国ごとの特徴など、基礎的な金融知識を身に付けておく必要があるのです。マネージュでは、中立的なファイナンシャル・プランナーとして、マネー教育に特化したコンサルティングを実施しています。少しでも興味を持って頂けた方は、LINE@への登録と、セミナー、コンサルにお申し込み下さい。少しでもあなたのお役に立てるように、全力でサポートさせて頂きます。